毎年4月18日に京都知恩院で実施される
「ミッドナイト念仏」
数年前に京都をうろうろしていた時に、
この知恩院前にでかでかと「ミッドナイト念仏」の横断幕がつられていた時から、
ぜひとも行ってみたいと思っていたのです。
こういう感じなのです。
歩いていたら、これが視界に入ったのです。
こんなの…
行くしかないでしょ!!!!
---------------------------
そもそも、ミッドナイト念仏とは、なんぞや。
かなりパンチの利いたネーミングセンスですが
れっきとした本物の宗教的な催しです。
法然上人 御忌大会
(ほうねんしょうにん ぎょきだいえ)
【法然上人がお亡くなりになられた日を期して行われる忌日法要。
知恩院で一番大きなかつ重要な法要です。
法然上人がお亡くなりになられた後、
その忌日に上人の門弟たちが修した「知恩講」に由来します。】
公式HPより抜粋
【法要期間中、法要以外に国宝三門楼上内にて夜通し行われる「ミッドナイト念仏 in 御忌」や「吉水講詠唱奉納大会」など様々な行事・催しが行われます。】
ということで、この「御忌」の中の催しの一つが「ミッドナイト念仏」なのです。
ミッドナイト念仏では何をするのかというと、
「夜通し木魚を叩き続ける」のです。
叩くと言うか、念仏を唱え続ける催しなのですが
実際念仏を唱えている人は坊主頭の人がほとんどで
一般の人はとりあえず木魚を叩いている感じでした。
詳しくは後述。
←これは木魚を叩くバチのようなものですね。
「バイ」とか「シュモク」と呼ぶのだとか。
(このフライヤーも行けばもらえます。)
こんな可愛いフライヤーも。
この絵のように、一人一木魚用意してもらえます。
木魚が小さな座布団にのってます。
ともかく、ものすごく光っているのは「ネーミングセンス」ですよね。
とりあえずびっくりしますよね。
←このQ&Aにも書かれていますが、
「お念仏はロックだ」
「トランスした」という声が寄せられるそうです。
たぶん、その印象を持った方のうちのかなりの人が
このネーミングに引っ張られてると思いますよ。。。
お堅いイメージの「念仏」と、「ミッドナイト」というディスコっぽい響きの融合。
いったい誰が考えたんでしょうね。
只々すごい。
これの名前を考えたのがお坊さんの一人なら、
広告代理店にヘッドハンティングされるべきってくらい絶妙だと思います。
この催しは、年に一度、【4月18日】に行われます。(日付固定)
ここ数年の4月18日は平日だったのです。
そして「ミッドナイト」の名が示すとおり、
夜8時スタートなのです。
京都近隣にいないと、平日の参加はなかなか困難。
待ちに待って、今年やっと土曜にあたってくれたので行くことができました。
2009年が土曜
2010年が日曜
2011年~2014年は平日で
2015年の今年、やっと土曜。
ちなみに来年は日曜…と言いたいところですが、
うるう年なので1日ずれて月曜です。
残念。
しばらくまた平日が続きますね。
2020年に4月18日が土曜にあたりますので、
遠方の社会人の方は2020年を待ちましょう。
もしくは平日にお休みをとってください。
「ポックマ」です。
う~んと…か、かわいい!(微妙には!)
一応参加者には
ポックマのような座り方の人はいませんでしたが。
←会場内は撮影禁止のため写真はありませんが、
このパンフレットの真ん中のような様子です。
(見えづらくてすみません。)
公式HPをご覧になる方がよく写ってると思いますので、
気になる方はそちらをどうぞ。
この会場(「三門の楼上」です)は普段公開されていないのですが、
この期間は入ることができるのです。
では、順を追ってレポしていきます!
1.何時に並ぶべきか
まず、開催が20:00です。
そして、木魚の数が150個です。(現地で聞きました。)
去年頃の情報ですが、
平日開催の時は19:30頃で30人程度並んでいた、とのことでした。
20:00に開催で、始めの30分ほどで「法要」があるとのことです。
法要が終わると、木魚を叩き始めるのだとか。
できればこの法要から参加したい。
今年は土曜です。
19:00には現地にいた方がいいという判断をしましたが、
用事があったので、結局知恩院に着いたのが19:30。
ダメです、遅すぎました。
19:30の時点で、三門下の階段を下りて、右側の歩道のところまで列が延びていました。
数えてみると170人くらい既に並んでいました。
さすが土曜です。
残念ながら最初から参加することはできませんでした。
→土曜のミッドナイト念仏は
最初から参加したいなら19:30じゃ遅い!です。
2.参加者の層は
平日だと若いカップルが多く、
夜になるにつれ酔っ払い客や学生が現れる。
→カオスな感じになっていく。
そう、聞いていたのですが、
私がいた時間帯(19:30~22:00)だからかしれませんが、
比較的おじさんおばさんが多く、落ち着いた雰囲気でした。
敬虔な仏教徒ばかりというわけではなく、冷やかしも多いので、
少しでも興味があれば参加可能です。
開催時間中なら、いつでも誰でも参加できます。
別に勧誘されたりもしません。
私自身ミッドナイト念仏というネーミングに惹かれて行ったクチなのですが、
何事もなく1時間もぶっ通しで木魚を叩いてきました。
朝まで木魚を叩けて、普段見られない楼上の中を見せてもらえるのに
無料。
知恩院側のメリットはどこにあるのでしょうか…
あんなに並んでいる人(酔っ払いまでいる)を捌くのも大変でしょうに。
そんなにしてまで人々を救おうとしてくださるなんて、なんと尊いお坊さんたち。
なお、誰でも参加可能とはいえ、
行かない方がいいだろうなと思う人は以下の方です。
・妊婦さん →楼上にあがる階段が急だし足元が暗いです。
・ご老人 →同上
・靴下に穴があいている人 →靴を脱がないといけません。(靴を入れる袋は配ってくれます)
・荷物が多い人 →狭いので邪魔です。
・大金を持っている人 →ロッカーはないです。
独りで参加されていらっしゃる方もいましたが、
私にはその度胸はなかったので友人を誘うことにしました。
ただ、夜の京都で木魚を叩く会に付き合ってくれる人は少なそうで…
どうしたものかと思案していると、いい人物がいました。
“ドラマー”のR氏。
「木魚、叩いてみたくない??」って誘ったら、
一発OKでした。(あぁ、信心深い方本当にすみません。)
私もベースを弾いていたのでね、
リズム隊ならきっと木魚のビートに興味があるだろうと。
計算どおり。
というわけで、連れはそのように確保いたしました。
3.待ち時間
19:30に並んだ私たちですが、
入れたのは20:40でした。
(来る途中にコロッケ屋さんでコロッケを買って飢えを凌ぎました。)
20:00開始、20:30まで法要、ということを考えれば、
意外とすぐでしたね。
自由退席なので、20:00に入った人が全員朝まで参加するつもりだったら
後続の人は全員入れないじゃないかと脅えていたのですが
さすがにそんなことにはならなかったです。
土曜だからむしろ、地元民が少なく、早く帰らないといけない人が多かったのかもしれません。
縁起物なので、記念に少し叩いて退席という人も多かったのかな。
階段下で並んでいるので、中の様子はわかりません。
ただただ木魚の音が聞こえてきます。
一度に入れる人数は木魚の数だけなので、
満員になったら、誰かが出るまで入れません。
また、出口は別のところにあるので
今何人出てきたとかはわかりません。
ですので、いつ入れるかは予測不能。
友人と行く場合、隣に座っておかないとお互い退席するタイミングが計りかねるのでは…
→だから最初から行って隣を陣取らなければ!と思っていたのですが
最初から並ばなくても、友人と隣同士には十分なれました。
一人で来ている人は少ないので、席があくときは複数人分一度にあくのです。
4.いざ念仏
いよいよ楼上に案内してもらえる番がきました。
まず、靴を脱ぎます。
もらったビニール袋に靴を入れます。
そして簡単なアンケートを記入します。
パンフレットをもらえました。
そして、階段を上がります。
傾斜が急なのでドキドキします。
手すりのような白いロープがあるので、それを掴みながら上ります。
会場に案内されます。
「部屋の奥に係りの者がおりますので」と、座るところの指示を受けるように言われ入室。
照明は間接照明だけで、暗いです。
横長の長方形のお部屋で、みなさん畳の上に座っていらっしゃいます。
正面にたくさんの像がありました。
【中央に宝冠釈迦牟尼仏像、脇壇には十六羅漢像(いずれも重要文化財)】だそうです。
また、天井に絵が書かれていて朱色と緑色が印象的でした。
【迦陵頻伽(かりょうびんが)や天女、飛龍】が描かれていたそうです。
(知識がないので、観たときは「龍と、…あれはなんだろう?」状態でした。)
ところで、かりょうびんがというと、夢幻伝説タカマガハラを思い出しますね。
ビンガ、こんなに立派だったんだ…
畳のうえには木魚がたくさん並べられていています。
特に机などはなく、畳のうえに木魚があるだけです。
人々の間に仕切りもありません。
とりあえず、部屋の後ろの通路から、奥の係りの人のもとへ。
暗くて見えなかったので、何度か足元の建具の出っ張りで躓きかけました。
空いている木魚のところに座るように言われたので、座ります。
どこでもいいそうです。
部屋の真ん中にお坊さんが一人いて木魚を叩いています。
あとは部屋の奥に太鼓を叩いているお坊さんが一人います。
ほかはみんな一般の人のようです。
お部屋の中央からやや奥によった側の前の方の木魚が空いていたので
そこに座ります。
できれば中央に近いところに座る方が、メインの像をよく見られていいと思います。
さて、何をしろという指示もなかったので、とりあえず右に倣えです。
周りは既に慣れた様子で木魚を叩いています。
真似して叩き始めます。
真似して叩き…
んん…???
は、はやい!!!!
めっちゃはやいですよ!!!
後で聞きましたが、R氏いわく
「BPMは220くらいあった」とのこと。
私が知っている念仏と違う…
せっかちな人がたくさんいて、走り気味になってしまったのかと思いましたが、
違いました。
部屋の奥に、リズムを統括している太鼓があるんですよ。
その太鼓はお坊さんが叩いているのですが、その太鼓がその激速テンポなのです。
高速念仏は公式のリズムだったのです。
なお、自分の木魚の他に、そのリズムを司っている大きな太鼓も叩かせてもらえます。
太鼓はひとつだけなので、叩きたい人は並びます。
みんな10秒ほども叩くと満足するので、すぐに自分の番が回ってきます。
私も叩かせてもらいました。
太鼓を叩くバチ大きいんです。
餅つきの杵の先端みたいな感じといえばいいのか、
ともかく重いんですよね。
なので、女性が太鼓を叩く番になると、とたんにリズムが遅くなります。
すると、木魚を叩いている人たちを束ねていたものがなくなり、
バラバラになってしまいます。
なので女性が多い時間帯は、トランスし辛いのではないでしょうか。
とりあえず、
堂内を観察し(滅多に入れませんからね!)
周りの人を観察し(あそこに座っている人、モーラー奏法してない?)
木魚のどの部分を叩くと良い音が鳴るのか考察し、
それにも飽きて一心不乱に木魚を叩いていると…
なんかどこからか「にゃむにゃむにゃむ」って聞こえる…?
いったいどんな変態が紛れ込んでいるのだろうと思って声に耳を傾けると
「にゃむにゃむにゃむ」じゃなかった!!
「なむあみだぶ」っていう念仏が、
速すぎて「にゃむにゃむ」にしか聞こえない状態になっていただけでした。
どれだけ速いんだミッドナイト念仏!!
早口言葉かよ!!
まぁ驚きましたが、
ちゃんと念仏を唱えている人もいるんだなということがわかりました。
そうですよね、このイベント、
木魚を叩くのが本題じゃないですもんね。
念仏を唱えるのが本懐ですもんね!!
そんなこんなで、約1時間叩いて満足したので退席しました。
周りの人は1時間以内に結構入れ替わってしまっていました。
そりゃまぁ腱鞘炎になりそうな速さでしたから懸命かと思います。
このように、各各好きなタイミングで席から立てますのでご安心ください。
出口の階段を降りると、フライヤーが置いていました。
ご自由にどうぞとのことだったので、全種類もらって帰りました。
先ほどからアップしている写真がそれです。
5.帰りの時点での並び具合
22:00頃に私たちは楼上から降りてきました。
その時点での列は
←くらいでした。
三門下の階段を下りて、道路上にまで延びています。
私たちが並び始めたときよりも列が伸びているので、
220人は並んでいるのではないでしょうか。
しかも私たちのときとは違って、既に堂内に150人入っていてこの人数ですからね…
これだと、最後尾の人は2時間くらい待つのかなぁ。
6.終わりに
ミッドナイト念仏はとても不思議で面白い体験でした。
叩きながら、念仏について、仏教について、色々と考えることもできました。
若者に念仏に興味を持ってもらう、という点では
十分に成功している催しなのではないかと思います。
「牛に引かれて善光寺参り」ではなく、
「ミッドナイト念仏に惹かれて知恩院参り」ですね。
南無阿弥陀仏と唱えれば救われるという法然上人の教えですので
私はもしかしたらこの日のおかげで救われるのかもしれません。
今度は最初から参加できればいいなぁと思います。